「第2回 企業人のための生物多様性セミナー2024」 レポート
10月17日から18日にかけて、八ヶ岳の美しい自然の中で「第2回 企業人のための生物多様性セミナー2024」が開催されました。1泊2日のこのセミナーでは、参加者が森の自然と生きものを体感しながら、企業の森を自然共生サイト(OECM)にするための視点を学ぶびました。ご参加いただいた皆様と、素晴らしい講義をしてくださった講師陣に心から感謝いたします。
「森の時間」では、ヤマネ博士の湊と饗場の案内により、自然や生きものと触れ合う貴重な体験ができました。また講義では、環境省 自然環境局 自然環境計画の番匠 克二様、そして三井物産株式会社 サステナビリティ経営推進部 グローバル環境室の細島 彩起子様から、ネイチャーポジティブや持続可能な森林経営の取り組みに関する最新の知見を伺うことができ、豊かな学びの時間となりました。
今回のセミナーには、生命保険、印刷、医薬品、観光、地質調査・建設コンサルタント、損害保険業界の皆さまや、大学の研究機関関係者、北杜市の企業の方々、そして自然保護に深い関心を寄せる個人の方々など、幅広いバックグラウンドを持つ方々にご参加いただきました。リピーターの皆さまとの「絆」がさらに深まり、新たな「つながり」も多く生まれる機会となりました。
生物多様性を体感し、未来の活動に繋げるヒントを発見
参加者からは「ヤマネの愛らしさに感動」「三井物産の事例が非常に参考になった」「環境省のネイチャーポジティブ施策への理解が深まった」「ワークショップから、次に踏み出すアイデアが出た」といった多くの前向きな声が寄せられました。教育や研修に役立つ声も多く、実りあるセミナーとなりました。
いきもの体験の意義:ヤマネと共に自然共生を学ぶ
生物多様性は「いきもの・なまもの」の多様性であり、不思議で魅力あふれる命のつながりです。自然や生物は命ある「なまもの」だからこそ、直接体験によってその価値を実感し、理解を深めることが重要です。この体験が知識を腑に落ちるものとし、自然への思いやりを育むと同時に、人々の意識を大きく変える力を秘めています。バーチャルが拡大する現代において、この直接体験はあらゆる分野で新たな価値創出や持続可能な未来への原動力となるのです。
ヤマネの可愛さに感動!八ヶ岳でのいきもの体験
ヤマネを観察し、参加者からはその可愛らしさに感動の声が上がりました。ヤマネが森でどのように生活しているのかを洞察し、自然の恵みや生物多様性について考える貴重な時間となりました。天然記念物のヤマネが棲む森の環境や、巣作りに使用する樹木の種類、樹皮やコケについて学び、ヤマネが森でどのように暮らしているのかに思いを馳せました。
また、渓流での生きもの観察では、川や木々に隠れた多くの生き物の存在に気づき、私たちが普段気づかない多くの生き物が存在していることを知りました。さらに、水生昆虫の専門家である参加者さんから詳しい解説をいただき、生態系への理解が一層深まりました。そして、昼と夜で異なる森の姿を感じながら、自然との深い結びつきを実感する時間となりました。
ヤマネと森の生物多様性の意義を学ぶ
ヤマネがもたらす自然共生サイトの価値
ヤマネは、森林生態系の上位に位置し、花粉媒介で森の再生に貢献する日本最古参の哺乳類です。森の象徴種として、生物多様性や森林保全のシンボルであり、国指定の天然記念物で、都道府県によってはレッドデータの種(絶滅危惧種II種等)でもあります。その愛らしさで幅広い年代に親しまれ、アニマルパスウェイと共に保全の象徴として、自然共生サイト・OECMの代表種、そしてネイチャーポジティブへの原動力となります
当所の湊からは、ヤマネの不思議な生態や特徴、そして森における生物多様性の重要性についての講義が行われました。日常的に見過ごされがちな「普通のいきもの」の重要性、森の恵みや日本的な自然観に加え、清里の森で確認された844種の昆虫など、具体的な調査の意義、も強調されました。巣箱調査を通じて明らかにされたヤマネの子育てに関する不思議な習性や、湊の長年にわたる研究・経験に基づく貴重な知見が共有されました。
また、ヨーロッパのヤマネの事例や、八ヶ岳の森で一晩かけて観察されたヤマネの食性や冬眠時の工夫についての話も取り上げられ、ヤマネが「森の象徴」として持つ重要性が再認識されました。さらに、ヤマネの生息分布や「自然共生サイト」としての価値、保全活動の実際、森の分断を解消するアニマルパスウェイの役割など、ヤマネと森を守るための取り組みについても議論が深まり、参加者の大きな関心を引きました。
「三井物産の森」から学ぶ、生物多様性と企業経営の融合
「三井物産の森」プロジェクトでは、企業がどのように生物多様性を守りながら持続可能な経営を実現しているかが紹介され、多くの参加者から「非常に参考になった」という声が寄せられました。このセッションは、これからの企業経営に役立つ新たな知見を得る貴重な機会となりました。プロジェクトでは、全国75か所に広がる総面積45,400ヘクタールの社有林での持続可能な森林経営が紹介され、CO2吸収や生物多様性保護の取り組み、さらに2023年に京都の「清滝山林」が自然共生サイトとして認定された事例を通じて、企業の戦略的価値活用についての学びが深まりました。
▷ 参考リンク:「三井物産の森」
企業活動と自然の未来をつなぐ:環境省が語る生物多様性の新たな潮流
環境省からは、ネイチャーポジティブ宣言や企業活動と自然環境・生物多様性の関連性について説明がありました。特に、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の取り組みに日本企業が積極的に参加していることが強調され、生物多様性リスクの評価と開示の課題と重要性が伝えられました。
また、「自然共生サイト」に関する事例を通じて、生物多様性の保全が企業活動にどのように役立つかが具体的に示されました。生物多様性は、全ての財やサービスの基盤であり、一度失われると取り戻せないため、その重要性が強調されました。
講義後は活発な質疑応答が行われ、参加者からは行政の施策や法整備に関する多くの質問が寄せられ、理解が深まりました。特に、森を自然共生サイトとして活用する視点が重要であることが認識され、ネイチャーポジティブに対する意識が一層高まりました。
▷ 参考リンク:環境省自然共生サイト
楽しみながら学べる「いきものつながりゲーム」も大好評!
森の生態系の連鎖を楽しく体感できる「パンツのゴムゲーム」は大好評!生態系の繋がりを実感し、学びがより深まりました。参加者同士の意見交換も活発で、企業間の連携について考える有意義な時間となりました。
ワークショップを通じて広がる未来への可能性
このセミナーは、自然体験や講義だけでなく、生物多様性保全のためのアイデアを参加者同士で共有するワークショップも魅力のひとつです。国内外の企業の経営層・リ
キーワード: ネイチャーポジティブ、生物多様性、OECM、自然共生サイト、自然体験
予告!次回セミナーのご案内 ~ネイチャーポジティブを学ぶ~
経団連自然保護協議会が主催する「生物多様性セミナー」
開催概要
プログラム名: 第一回「先進的企業事例と体験から学ぶネイチャーポジティブ」
セミナー名: 積水ハウス「5本の樹」計画・「新・里山」から学ぶ企業価値向上
日時: 2024年11月27日(水)
場所: 大阪 新梅田シティ「新・里山」
セミナーの内容
次回セミナーでは、ネイチャーポジティブをテーマに、実践的な講義やワークショップを行います。今回ご好評をいただいた自然体験や企業の取り組み事例も取り上げ、さらなる学びの機会を提供します。
次回のハイライト ~ネイチャーポジティブの視点から~
- 積水ハウス「5本の樹」計画の事例
- 生物多様性の可視化や定量化をテーマに、企業価値向上への取り組み学び
- 都市緑地で自然共生サイトとなった「新・里山」での体験
- ワークショップ:ネイチャーポジティブにつながる新たなビジネスチャンスを創るには
参加へのお誘い
セミナーの詳細については、近日中にご案内いたしますが、事前のお問い合わせも大歓迎です。次回のセミナーでは、ビジネスと自然を結びつける新たなアイデアを発見できる機会となるはずです。
ぜひご参加をご検討ください!