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国際的な霊長類学誌に論文が掲載されました

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国際的な霊長類学誌に論文が掲載されました

【Folia Primatologica】に日本の樹上性動物のための歩道橋の総括が掲載されました

「道路開発に対する日本産樹上性哺乳類のための歩道橋の開発:野生動物と人との共生を目指して」

Folia Primatologica (フォリア・プリマトロジカ)は、サル、類人猿、キツネザル、およびその他の霊長類の研究である霊長類学に焦点を当てた国際的な査読付きジャーナルです。

そのジャーナルに樹上性動物のための歩道橋として、ヤマネトンネル、ヤマネといきもののためのトンネル、ヤマネブリッジ、アニマルパウェイの工夫、成果が記されています

論文名は、「Mitigating the effects of road construction on arboreal Japanese mammals: benefits for
both wildlife and people」(道路開発に対する日本産樹上性哺乳類のための歩道橋の開発:野生動物と人との共生を目指して)です。

当論文は学術論文の出版社Brill (ブリル)のサイトより、電子書籍を購入いただけます。

電子書籍▶:Folia Primatologica-Mitigating the effects of road construction on arboreal Japanese mammals: benefits for both wildlife and people(抄訳:道路開発に対する日本産樹上性哺乳類のための歩道橋の開発:野生動物と人との共生を目指して)

※当会の研究論文のアブストラクトと掲載情報の一覧は研究情報⇒学術論文のページをご覧ください。

論文の概要

私たちの研究・活動は1997年から2021年まで3つのプロジェクトから構成されています。

1つめのプロジェクトは、「トンネル」です。1つめは1997年に山梨県道路公社により山梨県北杜市に建設された「ヤマネといきものトンネル」です。筆者らの提案で山梨県北杜市の八ヶ岳山麓に森そのものを地面から切り取る「切土工法」からトンネルとした実践です。これにより森は分断されずに、ヤマネや生物全体への影響を止めることができました(現在その森はトンネルの上で繁茂しています)。

「ヤマネといきものトンネル」

2つめは、2021年に三重県尾鷲市に国交省紀勢国道事務所により自動車専用道路(高速道路)に建設された「ヤマネトンネル」です。トンネルを造ると出入り口のヤマネの棲む山の森は伐採されます。その伐採場所にヤマネの食べる樹の苗を植えた活動です。その苗は尾鷲小学校児童により5年間、育苗されたものでした。尾鷲は津波の影響を受けるため、山への高速道路は避難場所であり、物資の供給路なので重要なインフラです。そのため、開発とヤマネとの共生、防災をつなげた活動はSDGsにつながることを示しました。

「ヤマネトンネル」

2つめのプロジェクトは、1998年に山梨県道路公社により建設された「ヤマネブリッジ」です。有料道路工事がヤマネの棲む森を分断し、冬眠していた森を重機で伐採したため、筆者らの提案で山梨県道路公社と共に知恵を出し、建設した世界初のヤマネの歩道橋です。ヤマネ、リスが利用し、ヒメネズミ、シジュウガラが内部で繁殖しました(現在も繁殖中)。ヤマネが利用するためにさまざまな工夫がヤマネブリッジ建設に注入されました。道路サインと兼ねた頑丈な鉄製のブリッジはメンテナンスも安価です。

「ヤマネブリッジ」

3つめのプロジェクトは、2005年から2021年に至る「アニマルパウェイ」です。ヤマネブリッジより、安価で、材料がどででも入手できる材料を用いたトライアングル型の歩道橋です。動物たちが安全に利用するために多くの工夫が注入されました。ヤマネ、リス、モモンガ、ヒメネズミ、テンなどの日本のほとんどの樹上動物が利用しています。ザトウムシなどの無脊椎動物も利用しています。今、日本(帯広から尾鷲)とイギリスで建設されました。大成建設、清水建設、ニホンヤマネ保護研究グループ、北杜市、環境省、国交省などの官民学の共働きで展開してきました。

「アニマルパウェイ」

2021年、尾鷲市では高速道路建設のための道路工事・測量のために分断された所に筆者らの提案で「三重のわアニマルパウェイ」が国交省によりシュウマイなどを蒸すセイロを用いて建設されました。その場所は分断したため、ヤマネの餌とする苗を植え、それらが成長し、樹冠を形成するまでのヤマネのコリドーとするためです。その苗は尾鷲市小学校児童が育てたものでした。「三重のわアニマルパウェイ」は、国交省により命名され、その意味は、わっぱの「わ」、ヤマネと人の共生の「輪」、自然に還る=循環の「環」です。

「三重のわアニマルパウェイ」

このような活動は、SDGのいくつかの目標に貢献し、異なるタレントとのコンビネーションが成功の鍵であることを示しました。

論文掲載の経由

2021年、アメリカのTremaine Gregoryさん(国立スミソニアン動物園保全生物学研究所 自然環境保全センター:SMITHSONIAN NATIONAL ZOO AND CONSERVATION BIOLOGY INSTITUTE Center for Conservation and Sustainability)や、オーストラリアの Kylie Soanesさん(メルボルン大学 生態系・森林科学部 School of Ecosystem and Forest Sciences The University of Melbourne)らは、「Canopy bridgeの特集」をイギリスの霊長類学会であるFolia Primatologicaに提案しました。世界各地で道路による分断が、森に棲む多くの生物の生息に危機を与えているからです。それで、ブラジル、ケニア、タイなどから約30本ほどの論文・短報が寄せられました。日本からは私たちが参加し、私たちの論文は2022年8月に掲載されました。

霊長類学誌 Folia Primatologica(フォリア・プリマトロジカ)について

フォリア・プリマトロジカは、霊長類学に焦点を当てた国際的な査読付き学術誌で、
ヨーロッパ霊長類学連盟および、英国霊長類学会の機関誌です。
この学術誌1963年に創刊され、分子生物学、社会行動学、生態学、保護学、古生物学、系統学、機能解剖学など、霊長類学のさまざまな分野をカバーしています。

フォリア・プリマトロジカの公式ホームページ

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